コンサルタント養成コース

「アーリーサクセス」を組み入れる

コンサルティングを無事開始できたのですが、具体的な成果が見えるのは、まだしばらく先になる予定で、それを理解いただいて契約しました。ですが今になって、早く成果が見えないことで、クライアント側はイライラしているような感じです。どうすれば良かったのでしょうか?

コンサルティング計画に「アーリーサクセス」を組み入れると良かったでしょう。

コンサルティングにアーリーサクセスを組み入れる

クライアントの心理を知る

きちんと手順を踏んでコンサルティングのテーマに取り組んでいく場合、目に見える成果が即座に生まれるということは、ほとんどないかも知れません。そのことは、企画書の説明段階、契約段階で、しっかり伝えておく必要があります。

とは言え、早く成果が上がらないことに焦りを感じてしまうというのも、クライアント側の心理です。

その心理がコンサルタントに対する不信につながると、契約の継続が危うくなることにつながります。

そのようなクライアント心理を熟知しているコンサルタントなら、コンサルティング計画に「アーリーサクセス」を組み込む工夫をします。

アーリーサクセスとは

アーリーサクセス(Early Success)とは、文字通りの英語の意味は「早い段階での成功」です。

コンサルティングの現場では、コンサルティングが始まった後、なるべく早い時期に目に見える成果(成功)が現われるようにすることが、アーリーサクセスの概念です。

もちろん、真面目に手順を踏んで、じっくりと時間を経て成果が上がるようにすることが悪いわけではありません。しかし、上述のように、成果が見えないことに対して焦り始めるというクライアント心理があることも忘れてはなりません。

そこで、コンサルタント主導でアーリーサクセスを起こすようにします。すると、コンサルタントが来るようになってからまだ時間も経っていないのに、もうこんな成果を上げてくれた、とコンサルタントに対する評価が一気に上昇します。

コンサルタントに対する評価の上昇は、すなわちクライアントからの信頼度の上昇です。

初期の段階で信頼度を上げておくと、その後のコンサルティングを進めることが非常にスムーズになり、非常にやりやすくなります。

アーリーサクセスの大切さ、おわかりいただけましたでしょうか。

では具体的に、どうすればアーリーサクセスをもたらすことができるのでしょうか?

具体的なアーリーサクセスのもたらし方

本来のコンサルティングのテーマにより、話の持って行き方は変わりますが、基本は「すぐにできるのに、手をつけていない」ことに着目し、それらをサッサと片付けてしまうように仕向けることです。

たとえば私は成長戦略のコンサルタントとして、特に中期経営計画を策定することをテーマとしていました。

中期経営計画の策定は、何ヶ月にも及ぶプロジェクトです。完成後は年度経営計画に落とし込み、実行していくのですが、具体的な成果が見えるまでには、かなりの時間を要します。

そのような状況でもアーリーサクセスを生むために、「5年度を見据えて中期計画を作っていきますが、その前に、足元をしっかりと固めておく必要があります。ですのでまずは、すぐに片付くものはどんどん片付けてしまい、スッキリさせてから中期計画づくりに入りましょう」と持ち掛けたりしました。

そして、目先の問題と思われるものを挙げてもらい、「誰が」「何を」「いつまでに」を決め、早速、問題解決に取り組んでもらいました。

すると、次のミーティング時には、それらの問題が見事に解決されているわけです。

特に工場等の3S(整理・整頓・清掃)に関する改善をしてもらうと、成果が文字通り、目に見えることになりますので、効果抜群です。

コンサルティングの初期段階では、クライアントのモチベーションも緊張感も高いので、"宿題"はきっちりとこなしてくれます。それは、ちょっとした"成功体験"をクライアントにもたらすことにもなりました。

そして、クライアント内には"敏腕コンサルタント"という印象が形成され、その後のプロジェクトは、よく言うことを聞いてくれ、非常に進めやすくなったわけです。

ちょっとズルいやり方かも知れませんが、クライアントの心理状況にも留意し、アーリーサクセスによりモチベーションをうまく維持することも、優れたコンサルタントなら行なうべきですね。